就業規則と賃金規程の作り方講座(書く・直す・届け出る・周知する)

はじめに

全体像と攻略法

厚生労働省のモデル就業規則は70条あります。この講座は、その70条を覚える講座ではなく、自社の実態を条文に直して、届出と周知まで進める講座です。最初に、目指す所と外す所を決めておきます。
目次
  1. 70条を全部書き直す必要はありません
  2. 労務講座・賃金講座との関係
  3. この講座のゴール 必ず覚える
  4. やる所とやらない所
  5. 5つの区分の見取り図 さらっと
  6. 呼び方の約束

70条を全部書き直す必要はありません

就業規則と賃金規程を作ると決めた時に、まず手が止まるのは「どこから書けばいいのか」だと思います。 厚生労働省が公開しているモデル就業規則は、令和7年12月版で14章・70条あります。これを頭から全部読んで書き直そうとすると、途中で動けなくなります。

実際に自社のために手を入れる所は、そのうちの一部です。 手本のままで足りる条、自社の決め事を書き足す条、手本に載っていないので自分で考える条。この3つに分けると、作業の量はずっと小さくなります。 この講座は、その分け方と、分けたあとの書き方を身につける講座です。

労務講座・賃金講座との関係

あなたは、この講座の前に、2つの講座を読んでいる前提です。 1つは労務講座(https://course-roumu.pages.dev)、もう1つは訪問介護の賃金講座(https://course-houmon-chingin.pages.dev)です。 労働基準法(労基法)の基本や、処遇改善加算の仕組みは、そちらで扱いました。この講座では詳しく繰り返さず、「労務講座のNo.10」「賃金講座のNo.07」のように指します。 この講座の単元は、単に「No.05」のように書きます。講座の名前が付いていない番号は、この講座の単元です。

この講座のゴール 必ず覚える

厚生労働省のモデル就業規則と条文を手本に、就業規則と賃金規程を自分で書き・直し、届出と周知まで進められること。 仕上げの確認は社労士(社会保険労務士。労務や社会保険の手続きを仕事にしている国家資格を持つ人)に頼む前提です。何を頼むかを、自分の言葉で言えるところまでが合格の目安です。

満点(条文を暗記すること)は目指しません。 迷った時に、「手本のどの条を開くか」「どの条文で確かめるか」が分かっていれば十分です。

卒業課題 必ず覚える

課題は1つで、自社の「規則づくりシート」を1枚作ることです。 シートには、次の5つの欄があります。

○ ①直す条文と新旧対照 … 自社の正社員用の就業規則から直す条文を5つ選び、古い条文と新しい条文を並べて書きます。No.05〜09とNo.13で扱います
○ ②試用期間と人ごとの契約の一覧 … 契約社員(3か月)の扱いと、人によって契約が違う所を一覧にして、理由を書きます。No.03・04で扱います
○ ③賃金規程の条文 … 賃金の設計を、条文と別表の形にします。No.10〜12で扱います
○ ④意見書・届出・周知の段取り … 従業員代表の意見書、労働基準監督署(労基署)への届出、全員への周知を、期限つきの表にします。No.13〜16で扱います
○ ⑤社労士に聞くこと … 5つの欄に当てはまらない疑問と、仕上げに頼みたいことを書きます。全部の単元で使います

読んで分かった気になるだけでは、シートは埋まりません。 そこで、単元の終わりに「自社の規則づくりシートに書くこと」の枠を置いて、その単元で埋める欄を示します。使い方は、次の「学び方」で説明します。

やる所とやらない所

規則の世界は広いので、小さな会社で使う場面が少ないものは外しました。

やらない事 さらっと

外して不安になった時は、その場面になってから調べるか、社労士に頼めば足ります。

5つの区分の見取り図 さらっと

区分は、規則を作る時に実際に進める順に並べています。

区分1 規則の地図(No.01〜02)

就業規則が契約の中身としてどう効くのか、賃金規程やパート用の規則とどうつながるのか、手本をどう使うのかを押さえます。 内容はやさしく、ここがぼんやりしていると、あとの条文の話が全部ぼんやりします。

区分2 契約の形を選ぶ(No.03〜04)

あなたの会社が実際にやっている「最初の3か月を契約社員にして、そのあと正社員にする」形が、法律の上でどう扱われるかを読みます。 あわせて、人によって時給や手当を変えてよい範囲を読みます。この2本は、判例の考え方を1つ知っておくと迷いが減ります。 ここまでが、条文を書く前に決めておく土台です。

区分3 条文を書く(No.05〜09)

採用・労働時間・休暇・服務・退職の条文を、手本を元に自社用に書き直します。 訪問介護には、移動時間やシフトで決まる勤務といった、手本にそのままは載っていない場面があります。法律の最低ラインと、自社が決める所を分けて書くのが、この区分の仕事です。

区分4 賃金規程を書く(No.10〜12)

賃金の設計を、規程の条文にします。 設計が決まっていれば、書き写す作業に近い区分です。昇給と賞与は、書き方で約束の重さが変わるので、表現の選び方も読みます。

区分5 決めてから効かせるまで(No.13〜16)

条文を書いても、意見を聴いて、届け出て、全員に知らせるまでは終わりません。 変更のルール、従業員代表の選び方、届出、周知を、自社の段取り表にします。やさしい区分ですが、抜けがあると規則が効かない形になります。

呼び方の約束

この講座では、呼び方を次のとおり揃えます。

条文の数字や施行日(その決まりが実際に使われ始める日)は、すべて2026年11月4日時点の内容です。 e-Gov(国の法令検索サイト)と厚生労働省の公式ページで確かめました。 単元の終わりに、使った資料のURLを「出典」として付けています。気になった時は、元の資料を開いて確かめてください。

出典:モデル就業規則(令和7年12月版 https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf)/e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)。確認日 2026-11-04。