就業規則と賃金規程の作り方講座(書く・直す・届け出る・周知する)

区分5 決めてから効かせるまで★★★

No.15 労基署への届出と労使協定(36協定・変形労働時間制)

規則ができて意見書がそろったら、労基署に届け出ます。この単元は、届出の書類・様式・出し方と、就業規則とは別に出す2つの協定届を扱います。書類の名前が多くて混ざりやすいので、何を何と一緒に出すかを表で整理します。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 就業規則(変更)届
  3. 第2章 就業規則とは別に出す2つの協定届
  4. 確認問題

第0章 前提知識

① 届出 :決められた書類を、労基署に出すこと

届出とは、法律で決められた書類を、役所に出すことです。 就業規則の届出先は、事業場を管轄する労働基準監督署長(労基署)です。

事業場は、場所ごとの職場を1つと数える、労基法の単位でした。届出は、企業単位でなく事業場単位で行います。

② 届出に出てくる書類の違い

書類 何のためか 様式
就業規則(変更)届 就業規則を作った・変えたことを知らせる 決まった様式はなく、様式例がある
意見書 過半数代表者の意見を付ける(No.14) 様式例がある
1か月単位の変形労働時間制の協定届 労使協定で変形労働時間制を決めた時 様式第3号の2
36協定届 時間外・休日労働の協定を出す 様式第9号(特別条項付きは様式第9号の2)

労使協定とは、会社と過半数代表者(労働者の過半数を代表する人。No.14)が書面で結ぶ、労働時間などについての約束です。 協定届は、就業規則の届出とは別の届出です。就業規則に書いたから協定届が要らなくなる、という関係ではありません(変形労働時間制の例外は第2章①)。

第1章 就業規則(変更)届

① 出すもの 必ず覚える

就業規則を作った、または変えた時に、労基署へ出すのは次の3点です。

  1. 就業規則(変更)届
  2. 過半数代表者の意見書
  3. 就業規則本体(別に定めた規程も含む)

賃金規程・育児介護休業規程などの別規程も、就業規則の一部なので、届出が要ります。 厚労省のモデル就業規則も、賃金を別規程にした場合は別規程も就業規則の一部になるので届出が必要、と書いています。 本体を直さず、賃金規程だけを直した時も、変更として届け出ます。

常時10人以上の労働者を使う事業場になったら、遅滞なく届け出ます(労基則49条1項)。 登録ヘルパーや短時間の人も数えます。

② 様式と押印 さらっと

就業規則(変更)届には、決まった様式がありません。 厚労省の「主要様式ダウンロードコーナー」に様式例(Word)があり、届と意見書が1つのファイルに入っています。

届の様式例にある主な項目は、次のとおりです。

使用者の押印・署名は、令和3年4月1日以降、不要です。 意見書の労働者側も、労基則49条2項の改正(同じ日から)で、代表者の氏名が書いてあれば足り、押印・署名は不要です。

③ 窓口・郵送・電子申請 さらっと

出し方は3つです。

方法 注意点
窓口 通常は2部持っていく。1部は写しでよく、受付印を押したものが控えとして返る
郵送 窓口と同じく2部。返信用の封筒を付けると控えが戻る(返信用の封筒は実務のすすめ)
電子申請 就業規則届は、労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」から出せる。電子署名・電子証明書は不要

最初の1回は、窓口で出すか、社労士の提出代行にします。電子申請に必要なIDの種類は、社労士か労基署に確認します。 社労士に頼む場合は、社労士証票の写しを付けた提出代行証明書をPDFで添付すれば、社労士の電子署名がなくても電子申請できます。

本社一括届出(本社が全事業場分をまとめて出す方法)は、事業所が1つのみどり訪問介護のような会社では、通常使いません。

届出を怠ると、30万円以下の罰金の対象になります(労基法120条)。届出は、省略してよい手続ではありません。

第2章 就業規則とは別に出す2つの協定届

① 1か月単位の変形労働時間制の協定届(様式第3号の2) 必ず覚える

1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内の期間を平均して、週40時間以内に収まる制度です。収まれば、特定の日や週に8時間・40時間を超えて働かせられます(労基法32条の2)。訪問介護で、月ごとのシフトを組む時に使われます。シフトの中身はNo.06で扱います。

この制度の定め方は、2つあります。

条文は、届出が必要なものを「協定」と書いています。就業規則で定めた場合は協定ではないので、協定届は出さない、と読めます。 どちらの方法でも、変形期間の起算日(いつから数えるか)を、就業規則などで明らかにします(労基則12条の2)。協定で定める場合は、有効期間も定めます(労基則12条の2の2)。

様式第3号の2に書く主な項目は、次のとおりです。

チェックがないと、届出の形式要件を満たさない、とされています。 No.14で見た選び方に沿って選んだことを、ここで確認する欄です。

シフトで運用する場合、各日の勤務割は、変形期間が始まる前までに具体的に決めておきます(2017年の厚労省の介護パンフ)。 開始後にシフトを組み替える運用が多い場合は、その扱いを社労士に聞くことに入れます。

② 36協定の届出(様式第9号) 必ず覚える

36協定とは、時間外労働や休日労働をさせる時に結ぶ労使協定のことです(労基法36条)。 届出は様式第9号で行います。法定休日とは、法律が与えなければならない週1日(または4週4日)の休日のことで、会社が決めた所定休日とは別です。特別条項(月45時間・年360時間の原則を超える場合の定め)を付けるなら、様式第9号の2です。

厚労省の様式は、令和7年6月1日の更新版で、押印・署名は不要です。 労働者代表の適格性についてのチェック欄があります。

ここで1つ、よく聞く言い方を整理します。 「36協定は必ず結んでおくもの」と受け取られがちですが、厚労省のリーフレットの書き方は違います。公式の書き方は、「残業させる場合には、36協定を締結し労基署長に届け出る必要があります」です。 つまり、時間外労働・法定休日労働を一切させないなら、協定は要りません。

ただし、「本当に時間外がゼロか」の判断が、訪問介護では難しい所です。 利用者宅の間の移動・待機・記録作成・研修も、労働時間になりえます。それらを足した時に、1日8時間・週40時間を超える人がいないかを、先に確かめます。

「ゼロでも結んでおくべき」という決まりは、法律や国の資料に無いので、次の扱いにします。 超える可能性が少しでもあるなら、協定を結んで届け出ます。迷う時は、社労士か労基署に確認します。

更新の時は、更新する旨の協定を届け出ることで、新しい協定届の代わりにできます(労基則16条)。 特別条項を付けた場合の健康福祉確保措置の記録は、有効期間中と、満了後5年間の保存が必要です(労基則17条2項)。

③ 協定も周知が要る さらっと

36協定や1か月変形の協定は、就業規則と同じく、労働者への周知が必要です(労基法106条)。 周知の方法はNo.16で扱います。

○ よくある勘違い:就業規則に変形労働時間制を書いたので、協定届も出す → 就業規則で定めたなら協定届は不要。協定で定めたなら、様式第3号の2で届け出る
○ 関係する単元:No.06(変形労働時間制の条文)/No.14(意見書・代表者)/No.16(周知)

就業規則(変更)届・意見書・就業規則本体(別規程も)の3点を出す。変形労働時間制を協定で決めたら様式第3号の2、残業をさせる可能性があれば様式第9号を、別に出す。

自社の規則づくりシートに書くこと
○ 欄④(意見書・届出・周知の段取り):届出に付ける書類の一覧(本体・賃金規程・育児介護休業規程)、協定届が要るかの判断、出し方(窓口・郵送・電子申請)
○ 欄⑤(社労士に聞くこと):時間外が本当にゼロかの判断/電子申請に必要なID

確認問題

問1 みどり訪問介護は、就業規則の本体は直さず、賃金規程だけを直しました。届出について正しいのは?

問2 1か月単位の変形労働時間制を、就業規則に書いて定めました。協定は結んでいません。様式第3号の2の協定届は?

問3 36協定について、本文の説明に合うのは?

出典:労働基準法(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)32条の2・36条・89条・106条・120条/労働基準法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)12条の2・12条の2の2・16条・17条・49条/厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版(https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf)/主要様式ダウンロードコーナー(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html)・様式第3号の2(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/dl/new04.docx)・様式第9号(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001695822.docx)・様式第9号の2(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001695823.docx)/厚生労働省「労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184033.html)/確かめよう労働条件「36協定のない残業は違法です」(https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/pdf/saburoku_ihou.pdf)/北海道労働局「就業規則を作成・届出、周知しましょう」/介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント(2017年・https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000064728.pdf)。確認日 2026-11-04。労基法は2026年7月17日施行、労基則は2026年4月1日施行の版で確認。