就業規則と賃金規程の作り方講座(書く・直す・届け出る・周知する)
区分5 決めてから効かせるまで★★★過半数代表者とは、事業場で働く労働者の過半数を代表する人のことです。 就業規則を作ったり変えたりする時に、会社はこの人の意見を聴きます。
事業場とは、労基法で「場所ごとの職場」を1つと数える単位です。 みどり訪問介護のように事務所が1つなら、事業場も1つです。
| 言葉 | 何のことか |
|---|---|
| 過半数組合 | 労働者の過半数が入っている労働組合。あれば、こちらの意見を聴く |
| 過半数代表者 | 過半数組合が無い時に、意見を聴く相手になる人 |
| 管理監督者 | 労働時間などの決まりが適用されない、経営者と一体の立場の人(労働基準法(労基法)41条2号) |
| 意見書 | 過半数代表者の意見を書いた書面 |
この講座では、組合のない会社を前提に、過半数代表者を中心に書きます。 労働者とは、会社に使われて賃金を受け取る人のことです。正社員だけでなく、パートも、働き方の実態から労働者に当たる登録ヘルパーも入ります。
過半数代表者には、労基則6条の2が決める条件があります。 労基則(労働基準法施行規則)は、労基法の細かい決まりを書いた厚生労働省の命令(省令)です。
会社が「この人でお願い」と指名した人は、条件を満たしません。 投票や挙手で選ぶ時は、「就業規則の意見を聴く代表を選ぶ」という目的を、先に全員に知らせます。 何の代表か分からないまま、全員がうなずいただけでは、目的を明らかにしたことになりません。
管理監督者かどうかは、役職の名前では決まりません。 たとえば、みどり訪問介護の事務長が、実際には人事や給与の決定に関わる立場なら、管理監督者に当たる可能性があります。 その人は候補から外します。
例外があります。 事業場の労働者が全員管理監督者という場合だけは、1つ目の条件は外れ、2つ目の条件だけを満たせばよい扱いです。12人のうち管理監督者が数人だけなら、この例外は使えません。
過半数かどうかは、事業場の労働者の数を母数にして数えます。 パートやアルバイトなど、労働者に当たる人は、母数にも、投票する人にも含めます。厚生労働省の36協定(残業をさせる時に結ぶ労使協定。No.15)の案内も、「正社員だけでなく、パートやアルバイトなど事業場のすべての労働者」の過半数と書いています。
たとえばみどり訪問介護が、正社員4人・契約社員1人・登録ヘルパー7人の12人だとします。 過半数は7人以上です。正社員だけで数えて「4人中3人の賛成」を取っても、全員の過半数ではありません。
選ぶ時は、登録ヘルパーも含めて全員が投票できる形にします。 母数の数え方に迷う時は、所轄の労基署(労働基準監督署)に電話で確認します。
会社には、次の義務もあります。
意見書に反対意見を書いた人を、評価で下げるようなことは禁じられている、と覚えておけば十分です。
ここからは法律の決まりではなく、実務のすすめです。 選んだ記録を残します。日付・選ぶ目的を伝えた方法・投票か挙手か・誰が参加したか・選ばれた人の名前を、1枚の紙に書いて保管します。 意見書には選出方法を書く欄があり(様式例)、1か月単位の変形労働時間制の協定届にも、代表者の選出方法を書く欄があります(No.15)。その時にこの紙を使えます。
労基法90条は、就業規則を作る時も変える時も、過半数代表者の意見を聴き、その意見を書いた書面を届出に付けるよう求めています。 求められているのは意見を聴くことで、同意を得ることではありません。
全面的に反対でも、一部反対でも、意見を書いた意見書が付いていれば、届出はできます。求められているのは、意見を聴くことだからです。
代表者が意見書を出してくれない場合は、法律や国の資料に今の決まりが無いので、次の扱いにします。案を渡した日付と、意見を求めた記録を残し、早めに労基署へ相談します。
反対意見が出た時は、反対意見もそのまま意見書に書いてもらい、届出に付けます。 不利益な変更なら、意見を十分に聴いたこと自体が、No.13で見た「労働組合等との交渉の状況」の裏付けになります。
厚労省の様式例(Word)にある意見書の項目は、次のとおりです。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 日付・宛名 | 意見を求められた日と、会社の名前 |
| 意見 | 「○年○月○日付をもって意見を求められた就業規則案について、下記のとおり意見を提出します」に続けて書く |
| 労働者代表の職名・氏名 | 過半数代表者の名前 |
| 選出方法 | 「投票による選出」「挙手による選出」など |
使用者・労働者とも、押印や署名は不要です。労働者側は、労基則49条2項が改正され、代表者の氏名が書いてあれば足ります(令和3年4月1日から。使用者側の押印不要も同じ日から)。
みどり訪問介護の意見書の例です。
令和○年○月○日付をもって意見を求められた就業規則(変更)案について、下記のとおり意見を提出します。 記 特に異議はありません。 労働者代表 訪問介護員 ○○ ○○ 選出方法 全従業員による投票
賛成でも反対でも、意見の欄に書いてもらう中身は変わりません。 同意は要らないので、「同意します」ではなく「意見」を書く形になっています。
パート・有期の人向けに別の規則を作っても、就業規則であることは変わらないので、意見を聴く相手は、事業場の全労働者の過半数代表です。 さらに、パートタイム・有期雇用労働法(以下「パート有期法」)7条は、その人たちの過半数代表の意見も聴くよう努めること(努力義務)を求めています。努力義務とは、守らなくても罰則はないが、そうするよう努めなければならない義務のことです。 手順としては、全員の代表の意見書を1通もらい、あわせてパート側の意見も聴いておく、と考えておけば迷いません。
○ よくある勘違い:意見書に「同意」と書いてもらわないと、届出ができない → 意見を聴いたことが分かれば足りる。反対意見が書いてあっても、意見書が付いていれば届出はできる
○ 関係する単元:No.13(不利益な変更での意見の聴き方)/No.15(意見書を付ける届出の様式)
過半数代表者は、管理監督者でない人を、目的を伝えた投票・挙手で選ぶ。会社の指名は不可。母数には登録ヘルパーも入れる。意見は聴くだけでよく、同意は要らない。
自社の規則づくりシートに書くこと
○ 欄④(意見書・届出・周知の段取り):代表者の選び方(いつ・投票か挙手か・誰が参加するか)と、意見書をもらう日
○ 欄⑤(社労士に聞くこと):登録ヘルパーを母数に入れる数え方に迷う点
問1 みどり訪問介護の社長が「事務所によく来る正社員のAさんに頼もう」と決めて、Aさんに意見書を出してもらうことにしました。この選び方は?
問2 正社員4人・契約社員1人・登録ヘルパー7人(全員が労働者に当たる)の事業場で、代表者を投票で選びます。「過半数」の数え方として、本文に合うのは?
問3 過半数代表者が、就業規則の変更案に「反対」と書いた意見書を出しました。会社の扱いとして適切なのは?
出典:労働基準法(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)41条・89条・90条/労働基準法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)6条の2・49条/パートタイム・有期雇用労働法(https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000076)7条/厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版(https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf)/厚生労働省「就業規則(変更)届・意見書の様式例」(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001749194.docx)/労基則49条2項の改正(令和2年12月22日公布の厚生労働省令第203号、令和3年4月1日施行)/厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A 36協定の過半数代表者の要件(https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/hatarakikatakaikaku/q3.html)。確認日 2026-11-04。労基法は2026年7月17日施行、労基則は2026年4月1日施行の版で確認。