就業規則と賃金規程の作り方講座(書く・直す・届け出る・周知する)
区分1 規則の地図★★★モデル就業規則は、厚生労働省が公開している就業規則のひな形です。解説つきで、Word形式のファイルも配られています。 この講座で使うのは、令和7年12月版(厚生労働省労働基準局監督課)です。本則は14章・70条と、附則(いつから使い始めるかなどを書く部分)でできています。
注意したいのは、手本は法律ではない点です。 手本どおりに書けば法律に合う、という保証はありません。手本は「こういう形で書けます」という例で、自社の実態に合わせて直して使うものです。
| 資料 | 何のためか |
|---|---|
| モデル就業規則 | 主に正社員を想定した、就業規則全体の手本 |
| パート・有期雇用労働者用の規定例 | パート・有期の人だけに適用する、別の就業規則の手本 |
| 育児・介護休業等の規定例 | 育児・介護休業規程の手本(No.07で扱います) |
| 届出・意見書の様式例 | 労基署に出す書類の書式(No.14〜15で扱います) |
手本はいくつかあり、それぞれ使う場面が違います。この単元で扱うのは、主にモデル就業規則です。
手本は章ごとに役目があるので、条を読む前に章立てを一度見ておくと、迷いません。
| 章 | 内容 | 本講座で扱う所 |
|---|---|---|
| 1 総則 | 目的・適用範囲・規則の遵守 | No.05 |
| 2 採用、異動等 | 採用手続・試用期間・労働条件の明示・異動・休職 | No.03・05 |
| 3 服務規律 | ハラスメント・個人情報・遅刻早退など | No.08 |
| 4 労働時間、休憩及び休日 | 労働時間の3つの型・時間外労働・休日 | No.06 |
| 5 休暇等 | 年休・産前産後・育児介護・慶弔など | No.07 |
| 6 賃金 | 賃金の構成・手当・割増賃金・昇給・賞与など | No.10〜12 |
| 7 定年、退職及び解雇 | 定年・退職・解雇 | No.09 |
| 8 退職金 | 退職金の定め | 扱いません |
| 9 無期労働契約への転換 | 無期転換の定め | No.03 |
| 10 安全衛生及び災害補償 | 健康診断・ストレスチェックなど | 扱いません(必要になった時に手本を読みます) |
| 11 職業訓練 | 職業訓練 | 扱いません |
| 12 表彰及び制裁 | 表彰・懲戒 | No.09 |
| 13 公益通報者保護 | 通報者の保護 | 扱いません |
| 14 副業・兼業 | 副業・兼業の定め | 扱いません |
ここで見るのは「どこに何があるか」だけです。章ごとの条文は、該当する単元で読みます。
手本の「はじめに」には、下線が引かれた部分は各事業場(会社の中の、1つの働く場所のこと。みどり訪問介護なら事業所1か所)で決める、と書かれています。 社名や日数に加えて、規程例に入っている数字も、説明のための仮の値です。たとえば1か月単位の変形労働時間制の例にある「1日7時間15分」は、手本が示した例であって、あなたの会社の数字ではありません。
手本の数字をそのまま写して、自社の実態と食い違わせない。 就業規則に書いた事は、働く人との約束になります(No.01)。実態と違う数字を書くと、守れない約束を自分で作ることになります。
手本には「例1・例2・例3」のように、複数の型を並べている条もあります。 労働時間(19・20条)は、完全週休2日・1か月単位の変形・1年単位の変形の3通りです。どれか1つを選び、他は捨てます。選ぶ時の考え方は、No.06で扱います。
手本をいくら読んでも、次の場面は答えが出てきません。
もう1つ、手本の中の古い所にも注意が要ります。 12条の解説は、パワーハラスメント対策の根拠を労働施策総合推進法の「30条の2」と書いていますが、2026年10月1日の改正で、その条は31条に移りました。手本が出た後に法律が変わると、解説の条番号は古いままになります。
安全な扱いは、手本の解説に出てくる条番号を、そのまま自社の条文に写さないことです。 条番号を書く時は、e-Govで今の条文を開いて、施行日を確かめてから書きます(確かめ方は労務講座のNo.01。法令検索サイトで条文を開き、「施行日」の欄を見ます)。
手本の使い方は、次の4つの手順になります。
3の分け方が、作業量を決めます。 たとえば総則や服務の条は「そのまま使う」が多く、時間と休暇の条は「書き足す」が多くなります。
必ず書く事(No.01)に当たる条には、先に印を付けておきます。 始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決め方、昇給、退職と解雇の事由が書かれていない規則は、法律が求める内容を満たしていません。
手本は、厚生労働省が事業主向けに公開している資料です。 この講座では、手本の文章を長く引用せず、自社用の例は架空の会社「みどり訪問介護」の条文で書きます。実際に自社の条文を書く時は、手本のWord版を開いて、自分のファイルに手を入れていく形になります。
書き直した条には、「どこを何のために直したか」を1行ずつ残しておきます。 後で意見書や届出(No.14〜15)の時に、変更した所の説明に使えます。
○ よくある勘違い:手本のとおりに書けば法律に合っている → 手本は例で、数字は仮の値。載っていない場面もある
○ 関係する単元:No.01(規則と規程)/No.06(変形労働時間制)/No.08(カスハラ)
手本は法律ではなく、自社の決め事を入れる枠。数字は仮の値で、カスハラとシフト型の変形労働時間制は載っていない。章立てを見て、1条ずつ「そのまま・書き足す・自分で考える」に分け、直す条は新旧対照表にする。
自社の規則づくりシートに書くこと
○ ①の欄:手本のWord版と自社の規則を並べて、章立ての足りない所・多い所を書く。直す条文の候補を5つ選び始める
○ ⑤の欄:手本に載っていなくて自社に必要な場面(カスハラ・シフト型の勤務)を、問いの形で
問1 手本の就業規則の下線部や、規程例に入っている数字について、正しい扱いはどれですか。
問2 訪問介護の会社が、モデル就業規則を使って就業規則を作ります。手本だけでは答えが出ない場面はどれですか。
問3 自社の規則に手本の条文を取り入れる手順として、最初にやることはどれですか。
出典:モデル就業規則(令和7年12月版 https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf、ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html)の章立て・「はじめに」・12条の解説/パート・有期雇用労働者用の規定例(https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000815923.pdf)/労働施策総合推進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)30条の2から31条への移動(2026年10月1日施行)は、労務講座のNo.11の確認による。確認日 2026-11-04。