就業規則と賃金規程の作り方講座(書く・直す・届け出る・周知する)
区分2 契約の形を選ぶ★★★試用期間とは、本採用の前に、その人の適性を見るために置く期間のことです。 期間の定めのない契約(無期契約)の中に置く場合は、最初から正社員として雇い、その最初の何か月かが「見極めの期間」になります。
有期契約とは、「○月○日まで」と終わりの日を決めた契約のことです。 終わりの日が来れば、原則として契約は終わります。続けるなら、新しく契約を結び直す(更新する)ことになります。
あなたの会社は、最初の3か月を有期契約(契約社員)にして、そのあとに正社員の契約を結ぶ形にしています。 この単元の悩みは、「3か月の有期契約」と「試用期間」の境目が、思っているより曖昧な点にあります。
| 言葉 | 何のことか |
|---|---|
| 試用期間 | 本採用の前の、適性を見る期間。無期契約の中に置く形が基本 |
| 解約権留保付の雇用契約 | 試用期間の法的な呼び名。「適性がなければ辞めてもらう権利を、会社が留保(取っておく)している契約」という意味 |
| 本採用拒否 | 試用期間が終わる時に、本採用しないこと |
| 期間満了 | 有期契約の終わりの日が来て、契約が終わること |
| 雇止め | 有期契約を、更新せずに終わらせること |
| 解雇 | 会社の一方的な意思で、契約を終わらせること |
使用者(会社)が人を辞めさせる場面は、見かけの名前が違っても、実質は解雇と同じ重さで見られることがあります。 どの名前で呼ぶかより、どの扱いが適用されるかが大事です。
この単元では、架空のみどり訪問介護が次のようにしている前提で読みます。
試用のための有期契約を考える時の土台は、最高裁の判決(神戸弘陵学園事件、平成2年6月5日)です。 この判決の骨は、次の3つです。
適性を見るための「3か月の有期契約」は、期間満了で終わる約束が明確でない限り、試用期間と扱われます。
3か月と書いたから、3か月で自動的に終われる、ということにはなりません。 会社の目的が「適性を見ること」なら、書面の形がどうであっても、法律の上では試用期間と見られる可能性があります。
ここからは、判決の考え方を条文や判決文から当てはめた読み方です。 個別の事案がどう判断されるかは、最後は裁判所が決めます。
自社の形について、判決の骨が示す点を、次のようにチェックしてみます。
| 点 | 試用期間と見られやすい | 期間満了で終わる合意と言いやすい |
|---|---|---|
| 契約の趣旨 | 適性を見て、よければ正社員にする | 3か月の仕事のために雇う(本採用とは別の話) |
| 期間満了で終わる合意 | 通知書に書いていない、または曖昧 | 通知書と規則に、満了で終わると明確に書いてある |
| 仕事と扱い | 正社員と同じ職場・同じ仕事・同じ扱い | 正社員とは別の仕事や条件で働く |
| 満了時の手続 | ほぼ全員が自動的に正社員になる | 満了のたびに審査し、合格者とだけ新しく契約書を結ぶ |
みどり訪問介護の今の形は、2行目と3行目と4行目が、左の欄に近い状態です。 つまり、今のままでは「3か月で契約が終わる」と主張しにくく、試用期間と見られる前提で動くほうが安全です。
安全な扱いは、次の1つです。 現行の形が試用期間と見られるものとして、「終わらせる時は解雇と同じ重さの手続になる」と考えて運用します。 その前提で、書き方を整える方法が第5章、通常の試用期間に切り替える方法が第6章です。求人票と通知書の書き方は第4章で見ます。
試用期間の長さを決める条文は、労基法にも労契法にもありません。 ただし、合理的な期間を超えた長い試用期間を、無効とした例があります。 公序良俗(社会の常識に反すること)に反するという理由です(ブラザー工業事件、名古屋地裁昭和59年3月23日。厚生労働省「確かめよう労働条件」の記載)。
3か月が合理的かどうかを決める基準の数字は、法律にも国の資料にもありません。 そこで、3か月を超える長さにする時は、社労士に聞いてから決めます。
試用期間と扱われる場合、本採用を断ることは、法律の上では解雇の一種です(判決の言葉では、留保解約権の行使)。
判決の基準は、先の第1章①のとおり、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合です。 通常の解雇よりは、広い範囲で解雇の自由が認められます。ただし、何でも自由にできる、という意味ではありません。
もう1つ、解雇には予告のルールがあります。 解雇は、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(直近3か月に払った賃金の、1日あたりの平均額)に当たる解雇予告手当を払う必要があります(労基法20条)。 試用期間中の人には、この予告が要らない例外がありますが(労基法21条4号)、それは最初の14日までです。14日を超えて引き続き使うと、予告が必要になります。
| 試用期間中の人 | 入社から14日以内 | 入社から15日目以降 |
|---|---|---|
| 解雇予告(30日前、または手当) | 不要 | 要る |
| 合理的な理由と社会通念上の相当性 | 要る | 要る |
予告が要らない14日以内でも、合理的な理由と相当性の要件は外れません。 どちらの場合も、本採用を断る理由は、あとで説明できる形(欠勤の記録・指導した記録など)で残しておきます。
逆に、「3か月で終わる有期契約」と認められる場合は、ルールが変わります。 期間の途中で辞めさせるには、「やむを得ない事由」が必要です(労契法17条)。これは、解雇の自由が広い試用期間よりも、厳しい基準です。
期間満了で更新しない(雇止め)場合も、次のどちらかに当たる契約では、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がないと、雇止めが認められません(労契法19条)。
「3か月で本採用されるはず」という期待が、2つ目に当たることはあり得ます。 この当てはめに、国が決めた基準はありません。そこで、更新しない時にも、理由を説明できる形にしておきます。迷う時は社労士に確認します。
もう1つ、解雇予告の例外の「2か月以内の期間を定めて使われる者」(労基法21条2号)は、3か月の契約には当たりません。期間が2か月を超えているからです(条文の読みです)。
| 場面 | 契約の見られ方 | 終わらせるのに要る事 |
|---|---|---|
| 本採用しない | 試用期間(解約権留保付) | 客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性。15日目以降は解雇予告 |
| 期間満了で終える | 3か月の有期契約と認められた場合 | 更新を期待させる事情があれば、理由と相当性が要る(労契法19条) |
| 期間の途中で終える | どちらでも | 有期なら「やむを得ない事由」(労契法17条) |
無期転換とは、同じ会社との有期契約が通算5年を超えた人が申し込むと、期間の定めのない契約に切り替わる仕組みです(労契法18条)。 契約と契約の間に6か月以上の空白があると、通算はリセットされます(直前の契約が1年未満の場合は、もっと短い空白で足ります)。
試用のための有期契約も、その後の有期契約と通算されます。 みどり訪問介護のように、3か月のあとに無期契約(正社員)になる場合は、無期のほうに移るので、無期転換の問題は起きません。
注意したいのは、3か月の契約で終わった人が、あとで登録ヘルパーとして有期で再び雇われるような場合です。 同じ会社との契約なので、前の契約と通算されます。 安全な扱いは、空白が6か月未満の契約をすべて通算に数えることです。細かい数え方は、社労士に確認してください。
無期転換を申し込める有期契約を結ぶ時は、通知書に「無期転換を申し込めること」と「転換後の労働条件」も書きます(労基則5条)。モデル就業規則の第9章(57条)にも、規程例があります。
試用期間中でも、要件に当たる人は、入社した日から社会保険に加入します。 「試用期間中は社会保険に入れなくてよい」という考えは、誤りです。
つまり、フルタイムの契約社員は、入社した日から社会保険に加入し、雇用保険にも加入します。 3か月の契約でも同じです。試用期間と契約社員のどちらで呼んでも、変わりません。
手続の期限は、健康保険・厚生年金の資格取得届が、事実の発生から5日以内です(日本年金機構)。 試用期間の日数を、加入の日から外してよいという決まりは、法律にも国の資料にもありません。 そこで、入社日から加入の手続をとります。扱いに迷う時は、社会保険は年金事務所に、雇用保険はハローワークに確認します。
求人票や募集の時に明示する事項に、試みの使用期間に関する事項が入っています(職業安定法施行規則4条の2第3項2号の2)。 試用期間中と終了後で、業務の内容や労働条件が違うなら、それぞれを示します(同条6項)。
この項目は、2018年1月1日施行の職業安定法の改正で加わりました。 厚生労働省の指針の説明では、有期契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期契約の期間中の労働条件を明示しなければならない、とあります。試用期間と本採用が1つの契約でも、試用期間中の労働条件が本採用後と異なる場合は、それぞれを示します。
2024年4月の改正で加わったのは、就業場所・業務の変更の範囲、更新上限、無期転換の申込み機会などで、試用期間とは別の話です(労務講座のNo.03)。
求人票と通知書では、どの形を選ぶかで書く内容が変わります。 次の例は、形ごとの書き方を並べたものです。
形A:3か月の契約社員を続ける場合
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 契約期間 | 令和○年4月1日から6月30日まで(3か月) |
| 更新の有無 | 更新しない |
| 期間満了後 | 期間満了日までに登用審査を行い、合格した場合は、7月1日から期間の定めのない正社員として、新たに雇用契約書を結ぶ。合格しなかった場合は、6月30日で雇用契約は終了する |
| 登用審査の基準 | 出勤状況、業務の習得、利用者や同僚との関係 |
| 賃金 | 初級1号俸の月給170,000円(No.11の別表第1)。ほかに処遇改善手当50,000円(別表第3)。契約社員の間も正社員と同額なら、同額と書く。違うなら、金額を書く |
形B:通常の試用期間にする場合
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 契約期間 | 期間の定めなし |
| 試用期間 | あり(入社日から3か月) |
| 試用期間中の労働条件 | 本採用後と同じ(違う場合は、違う点をそれぞれ書く) |
| 賃金 | 初級1号俸の月給170,000円(別表第1)。ほかに処遇改善手当50,000円(別表第3)。試用期間中も同じ |
厚生労働省のリーフレット(2018年)の記載例には、試用期間あり(3か月)という書き方が載っています。 あわせて、「月給20万円(ただし、試用期間中は月給19万円)」のような書き方も載っています。 試用期間中の賃金が本採用後と違う場合は、金額ごと別々に書きます。ただし、最低賃金(労務講座のNo.09)を下回ってはいけません。
ここからは法律の決まりではなく、実務のすすめです。 3か月の契約社員の形を続けるなら、次の3つを揃えておく必要があります。
書く内容は、第4章②の形Aの表の「更新の有無」「期間満了後」「登用審査の基準」の3行です。 ここでは、この3行が通知書に入っているかを確かめます。
期間満了で契約が終わる旨を、本人が読んで分かる形で、書面に明確に残すことが、判決の「明確な合意」に近づく最低限の準備です。
正社員用の就業規則と、契約社員の間のルールの関係を、条文で示します。 次のような条を置く例が考えられます(みどり訪問介護の例です)。
第○条(契約社員の契約期間と登用) 契約社員の契約期間は3か月とし、更新しない。 2 契約社員が、期間満了日までに行う登用審査に合格した場合は、期間満了日の翌日から期間の定めのない正社員とする。この場合は、新たに雇用契約書を作成する。 3 登用審査に合格しなかった場合は、雇用契約は期間満了日に終了する。 4 登用審査は、出勤状況、業務の習得状況、利用者および同僚との関係を基準として行う。
あわせて、正社員用の就業規則の適用範囲の条に、契約社員の間の扱い(正社員の規則を準用するか、別に定めるか)を書きます。 契約社員を正社員用の規則に入れるのか、別の規則にするのかは、適用範囲の条(No.01)と合わせて決めます。
条文と書面を揃えても、運用が合っていなければ、第1章②の表の左側(試用期間と見られやすい)に戻ります。
これらを揃えられない場合、書面は「3か月で終わる」と書いてあるのに、実態は試用期間、という食い違いが起きます。 その場合は、第6章の通常の試用期間に切り替える方が、書面と実態が合います。
ここからも法律の決まりではなく、実務のすすめです。 最初から無期契約(正社員)として雇い、その中に3か月の試用期間を置く形です。
みどり訪問介護の就業規則の例を示します(モデル就業規則の試用期間の考え方に沿った例です)。
第○条(試用期間) 新たに採用した者には、採用の日から3か月間の試用期間を設ける。 2 会社は、試用期間中または試用期間の満了までに、勤務状況や業務の習得状況などから従業員として不適格と判断した場合は、本採用しない。 3 試用期間中に本採用を断る場合の手続は、第○条(解雇)による。
通知書は、第4章の形Bのとおり、入社時の1回で済みます。 本採用を断る場合は、第2章①の扱い(合理的な理由・相当性・15日目以降の解雇予告)になります。
| 項目 | 形A:3か月の契約社員 | 形B:通常の試用期間 |
|---|---|---|
| 契約の種類 | 期間3か月の有期契約 → 終了後に無期契約を結ぶ | 最初から無期契約。最初の3か月が試用期間 |
| 法律の上の見られ方 | 試用期間と見られる可能性がある(第1章) | 試用期間として扱われる |
| 終わらせる時 | 「期間満了」と主張できる場合は満了。主張できなければ解雇と同じ重さ | 本採用拒否。合理的な理由と相当性が要る |
| 解雇予告 | 試用期間と見られれば、15日目以降に必要 | 15日目以降に必要 |
| 社会保険・雇用保険 | 入社日から加入 | 入社日から加入 |
| 書類 | 入社時と登用時の2回、契約書を作る | 入社時の1回 |
| 無期転換 | 通算されるが、無期へ移れば関係しない | 関係しない |
| 就業規則の書き方 | 契約社員の条と、登用の条 | 試用期間の条 |
| 運用の手間 | 毎回の審査と契約書づくり | 満了時の確認 |
| 向く会社 | 採用しない人が一定数いて、審査と契約書づくりを毎回できる | ほぼ全員を本採用する前提 |
形Aは、実際に採用しない人がいて、審査と書類を毎回きちんとできる会社に向きます。 形Bは、ほとんどの人を本採用する前提の会社に向きます。みどり訪問介護のように、3か月が終われば正社員にしている場合は、書面と実態が合う形Bのほうが、後で争いになりにくい形です。
どちらを選ぶかは、あなたの判断です。 迷う場合は、第5章の運用が本当に毎回できるかを自問して、できないなら形Bを選ぶ、という順で決めると迷いが減ります。
形Bに切り替える場合は、次の順で進めます。
○ よくある勘違い:期間3か月と書いた有期契約なら、3か月で自動的に終われる → 適性を見る目的なら、明確な合意がなければ試用期間と扱われる
○ よくある勘違い:試用期間中は社会保険に入れなくてよい → 報酬が出る使用関係なら、入社日から加入する
○ 関係する単元:No.04(人ごとの契約)/No.05(採用・試用期間の条文)
適性を見るための3か月の有期契約は、満了で終わる合意が明確でない限り試用期間と扱われる。終わらせる時は、合理的な理由と相当性が要り、15日目以降は解雇予告も要る。社会保険と雇用保険は入社日から。ほぼ全員を本採用するなら、通常の試用期間(形B)に切り替える方が、書面と実態が合う。
自社の規則づくりシートに書くこと
○ ①の欄:試用期間の条・契約社員の条の新旧対照(形Aを続けるか、形Bに切り替えるかの案を1つ決めて、条文を書く)
○ ②の欄:試用期間(契約社員3か月)の扱いを、人ごとに書く。契約の形(A・B)・期間・賃金・社会保険と雇用保険の加入日と、その理由
○ ⑤の欄:試用期間の長さ(3か月でよいか)、社会保険・雇用保険の資格取得日の扱い
問1 みどり訪問介護は、適性を見るために3か月の有期契約で人を採用し、正社員と同じ仕事・同じ扱いで働かせています。満了時には、ほぼ全員が自動的に正社員になります。この3か月は、法律の上でどう見られやすいですか。
問2 試用期間として扱われる社員を、入社から20日目に本採用しないことにしました。必要なことはどれですか。
問3 契約社員(有期3か月)として入社した人は、週の所定労働時間が正社員と同じ40時間(週20時間以上)で、3か月の間は働き続ける見込みです。社会保険と雇用保険の扱いはどれですか。
出典:神戸弘陵学園事件 最高裁第三小法廷 平成2年6月5日判決(https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-19118.pdf)/確かめよう労働条件「試用期間」(https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/shogu/shiyou.html)/労働基準法(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)20条・21条/労働契約法(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128)16条〜19条/職業安定法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012)4条の2/労働基準法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)5条/雇用保険法6条(e-Gov)/日本年金機構「適用事業所と被保険者」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)/職業安定法改正リーフレット2018年(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171017_1.pdf)/労働契約法のあらまし(https://www.mhlw.go.jp/content/001234797.pdf)/モデル就業規則(令和7年12月版 https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf)。確認日 2026-11-04。労基法は2026年7月17日施行の版、労契法は2020年4月1日施行の版、職安則は2026年10月1日施行の版で確認。