就業規則と賃金規程の作り方講座(書く・直す・届け出る・周知する)

区分1 規則の地図★★★

No.02 モデル就業規則の読み方と使い方

条文を書く前に、手本の持ち方を決めておく単元です。手本は条文集ではなく、自社の決め事を入れる枠です。何をそのまま使い、何を自分で決め、何が載っていないかを、先に見分けられるようにします。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 手本の構造と、手本に載っていない所
  3. 第2章 手本を使って、1条ずつ書き直す
  4. 確認問題

第0章 前提知識

① モデル就業規則 :厚生労働省が公開している、就業規則の手本

モデル就業規則は、厚生労働省が公開している就業規則のひな形です。解説つきで、Word形式のファイルも配られています。 この講座で使うのは、令和7年12月版(厚生労働省労働基準局監督課)です。本則は14章・70条と、附則(いつから使い始めるかなどを書く部分)でできています。

注意したいのは、手本は法律ではない点です。 手本どおりに書けば法律に合う、という保証はありません。手本は「こういう形で書けます」という例で、自社の実態に合わせて直して使うものです。

② 似た言葉との違い

資料 何のためか
モデル就業規則 主に正社員を想定した、就業規則全体の手本
パート・有期雇用労働者用の規定例 パート・有期の人だけに適用する、別の就業規則の手本
育児・介護休業等の規定例 育児・介護休業規程の手本(No.07で扱います)
届出・意見書の様式例 労基署に出す書類の書式(No.14〜15で扱います)

手本はいくつかあり、それぞれ使う場面が違います。この単元で扱うのは、主にモデル就業規則です。

第1章 手本の構造と、手本に載っていない所

① 14章を先に見る さらっと

手本は章ごとに役目があるので、条を読む前に章立てを一度見ておくと、迷いません。

章 内容 本講座で扱う所
1 総則 目的・適用範囲・規則の遵守 No.05
2 採用、異動等 採用手続・試用期間・労働条件の明示・異動・休職 No.03・05
3 服務規律 ハラスメント・個人情報・遅刻早退など No.08
4 労働時間、休憩及び休日 労働時間の3つの型・時間外労働・休日 No.06
5 休暇等 年休・産前産後・育児介護・慶弔など No.07
6 賃金 賃金の構成・手当・割増賃金・昇給・賞与など No.10〜12
7 定年、退職及び解雇 定年・退職・解雇 No.09
8 退職金 退職金の定め 扱いません
9 無期労働契約への転換 無期転換の定め No.03
10 安全衛生及び災害補償 健康診断・ストレスチェックなど 扱いません(必要になった時に手本を読みます)
11 職業訓練 職業訓練 扱いません
12 表彰及び制裁 表彰・懲戒 No.09
13 公益通報者保護 通報者の保護 扱いません
14 副業・兼業 副業・兼業の定め 扱いません

ここで見るのは「どこに何があるか」だけです。章ごとの条文は、該当する単元で読みます。

② 手本の数字と名前は、仮の値 必ず覚える

手本の「はじめに」には、下線が引かれた部分は各事業場(会社の中の、1つの働く場所のこと。みどり訪問介護なら事業所1か所)で決める、と書かれています。 社名や日数に加えて、規程例に入っている数字も、説明のための仮の値です。たとえば1か月単位の変形労働時間制の例にある「1日7時間15分」は、手本が示した例であって、あなたの会社の数字ではありません。

手本の数字をそのまま写して、自社の実態と食い違わせない。 就業規則に書いた事は、働く人との約束になります(No.01)。実態と違う数字を書くと、守れない約束を自分で作ることになります。

手本には「例1・例2・例3」のように、複数の型を並べている条もあります。 労働時間(19・20条)は、完全週休2日・1か月単位の変形・1年単位の変形の3通りです。どれか1つを選び、他は捨てます。選ぶ時の考え方は、No.06で扱います。

③ 手本に載っていない所と、手本の古い所 必ず覚える

手本をいくら読んでも、次の場面は答えが出てきません。

もう1つ、手本の中の古い所にも注意が要ります。 12条の解説は、パワーハラスメント対策の根拠を労働施策総合推進法の「30条の2」と書いていますが、2026年10月1日の改正で、その条は31条に移りました。手本が出た後に法律が変わると、解説の条番号は古いままになります。

安全な扱いは、手本の解説に出てくる条番号を、そのまま自社の条文に写さないことです。 条番号を書く時は、e-Govで今の条文を開いて、施行日を確かめてから書きます(確かめ方は労務講座のNo.01。法令検索サイトで条文を開き、「施行日」の欄を見ます)。

第2章 手本を使って、1条ずつ書き直す

① 並べて、3つに分ける さらっと

手本の使い方は、次の4つの手順になります。

  1. 自社の今の就業規則と、手本のWord版を、画面に並べて開く
  2. 手本の章立てと自社の章立てを見比べて、足りない章・多い章に印を付ける
  3. 手本の条を1つずつ、次の3つに分ける
  4. そのまま使う条(法律の最低ラインに近く、自社に合っている)
  5. 自社の決め事を書き足す条(日数・時刻・金額・基準など)
  6. 手本にないので、自分で考える条(第1章③の2つなど)
  7. 直す条は、古い条文と新しい条文を1枚の表に並べる(新旧対照表)

3の分け方が、作業量を決めます。 たとえば総則や服務の条は「そのまま使う」が多く、時間と休暇の条は「書き足す」が多くなります。

必ず書く事(No.01)に当たる条には、先に印を付けておきます。 始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決め方、昇給、退職と解雇の事由が書かれていない規則は、法律が求める内容を満たしていません。

② 手本を使う時の約束 さらっと

手本は、厚生労働省が事業主向けに公開している資料です。 この講座では、手本の文章を長く引用せず、自社用の例は架空の会社「みどり訪問介護」の条文で書きます。実際に自社の条文を書く時は、手本のWord版を開いて、自分のファイルに手を入れていく形になります。

書き直した条には、「どこを何のために直したか」を1行ずつ残しておきます。 後で意見書や届出(No.14〜15)の時に、変更した所の説明に使えます。

○ よくある勘違い:手本のとおりに書けば法律に合っている → 手本は例で、数字は仮の値。載っていない場面もある
○ 関係する単元:No.01(規則と規程)/No.06(変形労働時間制)/No.08(カスハラ)

手本は法律ではなく、自社の決め事を入れる枠。数字は仮の値で、カスハラとシフト型の変形労働時間制は載っていない。章立てを見て、1条ずつ「そのまま・書き足す・自分で考える」に分け、直す条は新旧対照表にする。

自社の規則づくりシートに書くこと
○ ①の欄:手本のWord版と自社の規則を並べて、章立ての足りない所・多い所を書く。直す条文の候補を5つ選び始める
○ ⑤の欄:手本に載っていなくて自社に必要な場面(カスハラ・シフト型の勤務)を、問いの形で

確認問題

問1 手本の就業規則の下線部や、規程例に入っている数字について、正しい扱いはどれですか。

問2 訪問介護の会社が、モデル就業規則を使って就業規則を作ります。手本だけでは答えが出ない場面はどれですか。

問3 自社の規則に手本の条文を取り入れる手順として、最初にやることはどれですか。

出典:モデル就業規則(令和7年12月版 https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf、ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html)の章立て・「はじめに」・12条の解説/パート・有期雇用労働者用の規定例(https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000815923.pdf)/労働施策総合推進法(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132)30条の2から31条への移動(2026年10月1日施行)は、労務講座のNo.11の確認による。確認日 2026-11-04。